すがや・ひろゆき
医学博士。1987年、千葉大学医学部卒業。同年、千葉大学医学部整形外科入局。96年、米国留学(フロリダ州ウエストパームビーチ、オルソペディック・リサーチ・ラボにて、スポーツバイオメカニクスの研究)。97年、川崎製鉄健康保険組合千葉病院(現JFE川鉄千葉病院)整形外科部長。2002年、船橋整形外科病院スポーツ医学センター肩関節肘関節外科部長。14年、同肩関節・肘関節センター長。16年、同スポーツ医学・関節センター長。同時に、ハワイ大学医学部客員教授、東京女子医科大学整形外科客員教授を兼任。アメリカ肩肘学会(ASES)会員、日本整形外科スポーツ医学会理事、日本肩関節学会評議員などの役員を務め、2017年10月開催予定の日本肩関節学会では会長を務める。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター
主に50歳以降の人に発症する肩腱板断裂
「治療にあたっては、ベストな選択を常に心がけています。
ベストな治療法をベストなタイミングで行います」
肩甲骨と上腕骨をつないでいる腱板が切れてしまう肩腱板断裂では、患者に低侵襲な関節鏡視下手術が行われている。数多くの日本整形外科学会認定整形外科専門医たちが推薦する船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センター長の菅谷啓之医師は、「正確で安全な手術が可能です」と関節鏡視下手術の利点を語る。
肩腱板断裂ではどんな断裂かを診ることが大切
 腱板断裂とは、肩甲骨(けんこうこつ)と上腕骨をつないでいる腱板という板状の腱が切れてしまった状態をいいます。主に50歳以降の人に発症します。症状は、肩の痛み、肩に力が入らない、腕が上がらないなどです。
 腱板断裂では、まずどんな断裂かを診ることが大切です。腱板断裂の大きさ、切れ方、筋肉がやせているかどうかなどの状態を診た上で治療法を選択していきます。
 治療は、腱板が切れていても、時間経過と共に症状が軽快することが結構あり、注射や理学療法などの保存療法の効果がかなり期待できます。
 例えば、炎症がある場合は、薬や注射、安静にするなどの保存療法で痛みのコントロールを行います。肩甲骨がきちんと動けるかどうかも重要で、動けなければリハビリテーションを行います。断裂している人の半分近くがリハビリで症状が改善したりします。
切開せずに小さな創を数カ所つくってアプローチする関節鏡視下手術
 ただし、活動性の高い人で、発症後3カ月以上症状が続いている場合は、手術を要する可能性が高くなります。手術が必要な場合は、切開せずに小さな創を数カ所つくってアプローチする関節鏡視下手術を行っています。関節鏡視下でビス(アンカー)を打ち、糸をかけて、断裂した個所を修復する手術です。
 関節鏡視下手術の利点は、骨の裏側をはじめどこまでも見ることができるため、正確で安全な手術が可能になることです。正常な組織である三角筋なども損傷せずに手術ができます。
 一方、腱板が大きく断裂してからあまりに時間がたっていたり、腱板の筋肉が極端にやせていたり、手が上がらないなどの症状がある場合は、リバース型という人工肩関節手術を検討します。本邦でも2014年4月から使用可能になりました。
 関節鏡視下手術を本格的に手がけたのは1996年からで、20年以上がたちます。関節鏡視下手術を行いながら臨床で新しいことを次々に発見し、それを英文で発表して世界で認められるようになりました。現在では、海外の学会やセミナーで講演やライブサージャリーという公開手術をよく依頼されるため、年間100日以上の海外出張を行っています。
患者さんを治そうとするハートのある治療を心がける
 私の場合、肩関節の疾患と治療については、アメリカで行われた手術のビデオを取り寄せて見様見真似で勉強しました。パイオニア的な人間は、いつの時代も自分で開拓していかなければなりません。
 現在、当院のスポーツ医学・関節センターでは、肩、肘、下肢の治療を行っています。肩肘の関節鏡視下手術は年間(2015年1月~12月)で900例行い、肘が100例、肩が800例で、肩関節のうち腱板断裂は300例ほどです。人工肩関節手術は100例を手がけています。
 診療にあたってモットーとしているのは、患者さんのニーズに徹底して応えるということです。正確な診断はもちろん、患者さん一人ひとりに最も適切な治療を行います。
 リハビリテーションについても、当院には理学療法士が100人以上いますが、中でもトップレベルの理学療法士は、豊富な経験と高い技術を持ち合わせており、これまでスポーツ選手の治療や術後の理学療法では高い実績を上げてきました。
 肩肘疾患の治療にあたっては、理学療法を含めてベストな治療法の選択を常に心がけています。不必要な手術は行なわず、ベストな治療法をベストなタイミングで行います。手術とリハビリテーションでは、最高のクオリティーのものを提供できると自負しています。
 幸いなことに、今では全国に100人を超す私のところで研修した医師や理学療法士がおり、迅速な情報交換により、患者さんの相互紹介もできるようになっています。ここに勉強に来るドクターには、自分でやりたいような、できるような環境を整備しなさいといつも話しています。あとはハートです。患者さんを治そうとするのもハート、スタッフに接するのもハートありきです。
 肩の疾患は、きちんと診断して、きちんと治療すればほとんどが良くなります。悩み事があれば、気軽にご相談ください。

※2016年9月30日 掲載

 

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医療機関情報
施設名 船橋整形外科病院
フリガナ フナバシセイケイゲカビョウイン
TEL 047-425-5585
住所 千葉県船橋市飯山満町1-833
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