いしはら・しょういちろう
1986年順天堂大学医学部卒業。東京逓信病院内科レジデントを経て88年順天堂大学脳神経外科入局。その後米国国立衛生研究所(NIH)研究員として3年半勤務。92年防衛医科大学脳神経外科助手。米国ヒューストンBaylor医科大、フランスパリロスチャイルド病院にて臨床フェローとして勤務。2004年埼玉医科大学助教授。09年埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科教授。脳血管内治療科診療科長。16年埼玉石心会病院副院長。2018年1月より現職。日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医
患者さんにいかに負荷を与えないかが
低侵襲手術の最大の目的
高度な手術を可能にするハイブリッド手術室

別室にて的確な手術指示を出せるよう複数の大型モニターを設置
 2017年11月に新築移転した埼玉石心会病院。その際に念願だった「低侵襲脳神経センター」を構え、現在院長の職と共にセンター長も務めているのが石原正一郎院長だ。
 石原院長が脳外科の分野で低侵襲手術に取り組むきっかけとなったのは、研修医として内科で研修していた時代に遡るという。
 「1980年代後半当時、カテーテル治療や内視鏡手術など、心臓に対してはすでに低侵襲に対する取り組みが始まっていましたが、当時、脳外科の分野では開頭手術しか選択肢がありませんでした。しかし脳は一度壊れると、その機能を戻すのが難しい臓器です。だからこそ脳へのダメージを最小限に抑え、言語や記憶、認知といった高次機能を温存できる低侵襲治療は、将来必ず脳外科の分野でこそ求められるようになると考えました」と石原院長。「20年前に埼玉県で脳血管内治療を行っているのは私だけでした。その後、前職の埼玉医科大学国際医療センターに脳血管内治療科を作り弟子達を育てました。2016年に当院に移り新病院において脳に負担をかけない治療の一つとして脳血管内治療を日々行っています。他県からも多くの患者さんが来られ忙しい毎日です。」
 その思いがようやく結実して設立されたのが、現在の低侵襲脳神経センターであり、その核となっているのが「ハイブリッド手術室」だ。この手術室はMRI・CT・血管造影・脳外科顕微鏡・ナビゲーション・神経内視鏡などをすべて備えており、検査と手術、さらには開頭と内視鏡といったように、複数の行程や術式を同時に行うことが可能で、手術時間の短縮を含め、患者さんにかかる負担を最小限に抑えるために大きな役割を果たしている。
日本でも急激に浸透してきている
「脳動脈瘤コイル塞栓術」
緊急時に備え完備されたヘリポート

2階手術センターの通路
 未破裂の脳動脈瘤が見つかった場合、現在は大きく分けて2つの治療法が存在する。1つは開頭をして脳動脈瘤にクリップをかける「クリッピング術」、そしてもう1つが血管内治療により動脈瘤の中にコイルを置く「コイル塞栓術」だ。現在、EU圏では7〜8割、アメリカでは5〜6割強、そして日本ではおよそ4割前後の割合でコイル塞栓術が適用されているが、埼玉石心会病院では、およそ5割の患者に対してコイル塞栓術を適用している。これまで長年この脳動脈瘤治療に関わってきた石原院長は2000例以上のコイル塞栓術の経験を持つ。
 「もちろん、動脈瘤の形状などでコイル塞栓術を選択できない場合もありますが、この治療法の認知度の高まりもあって、患者さん自ら希望される方も増えてきています」と石原院長は語る。
 患者さんの立場からすれば、開頭手術より血管内治療の方が安全で簡単だと考えがちだ。しかし広い術野をとれない分、むしろ血管内治療の方が難易度は高い場合もあると石原院長は指摘する。
 「当院では、脳動脈瘤に対する治療の第一選択肢はコイル塞栓術ですが、決して安易に決定しているわけではありません。開頭手術と血管内治療の担当者、さらには神経内視鏡、脳外科や神経内科の医師としてのキャリアがあるリハビリ担当者など、多職種によるカンファレンスを行なってあらゆる可能性を検討し、その上で患者さんの脳や体に一番負担をかけない方法を選択しています」
 この多職種によるカンファレンスは、実は開頭手術においても徹底している。手術に形成外科医や皮膚科が直接立ち会い、皮膚の血流を遮断しない方向から切開することで傷口のつきをよくしたり、縫合方法についてもなるべく回復が早い方法を患者さん一人ひとりに合わせて追求している。「新病院1年目の脳動脈瘤コイル治療は約90例で増加傾向です。又コイル塞栓術で時に問題とされる再開通による再治療ですが、私の成績では未破裂瘤は2%以下と全国レベルと比べてかなり低くなっています。」さらに術後の回復用に高圧酸素室を設け、細胞の代謝を上げて術後の患者さん自身の回復力を高めるといった方法も取り入れているという。
地域に高齢化に対応できるように
治療の分野を広げていきたい
自然色を基調とした落ち着いた院内
 念願であった低侵襲脳神経センターを立ち上げた石原院長だが、まだまだ今後に関する抱負は尽きないと語る。
 「治療で回復が望める唯一の認知症とも呼ばれる正常圧水頭症については、治療だけではなく啓蒙活動も含めて取り組んでいきたいと考えています」と石原院長は今後の展望について力強く語ってくれた。

 
 
 

※内容は2019年5月9日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 埼玉石心会病院
フリガナ サイタマセキシンカイビョウイン
TEL 【病院代表TEL】04-2953-6611
【脳神経センター直通TEL】04-2003-8910
※救急外来は24時間365日対応
住所 埼玉県狭山市入間川2-37-20
ホームページはこちらから(別ウインドウが開きます)

 

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