せがわ・おさむ
1988年、順天堂大学医学部卒業。順天堂大学小児外科勤務。94年、オーストラリア・メルボルン王立小児病院留学(Fellow in Endosurgery)。2010年、東京女子医科大学第二外科学講座臨床教授。15年、小児外科診療部長、副院長。18年講座名変更により現職。日本小児外科学会認定小児外科専門医。日本外科学会認定外科専門医。日本内視鏡外科学会評議員。日本小児泌尿器科学会評議員。日本小児内視鏡外科・手術手技研究会(2015年会長)







小児の外科手術には、臓器が小さい、体内で術具を動かせる空間が少ないといった物理的な面だけではなく、成長後のことも視野に入れた手術計画の必要性など、成人の手術とは違った特有の難しさがある。今回は日本で初めて新生児に対する腹腔鏡手術を行い、以降、常にパイオニアとして小児内視鏡外科手術の分野をリードしてきた東京女子医科大学病院・世川修小児外科診療部長に、日本における小児内視鏡外科手術の歩みや現状についてお話を伺った。
日本初の新生児に対する
腹腔鏡手術に執刀医として参加
豊富な経験をもとに熟練した高い技術力で高度な小児内視鏡外科手術を実施している
 日本で新生児に対して初めて内視鏡外科手術(新生児卵巣嚢胞に対する腹腔鏡手術)が行われたのは1992年のことで、世川部長はその時の執刀医だ。
 「海外で小児内視鏡外科手術が始まったのが、91年頃でした。当時私は順天堂大学小児外科の医師で、恩師である宮野武先生(現順天堂大学小児外科名誉教授)が、傷口が小さい内視鏡外科手術は、これから長い人生を歩む子どもたちにこそ絶対に必要になると考えておられ、消化器内視鏡に関心が強かった私に取り組むように勧めて下さったのが、小児内視鏡外科手術に取り組むきっかけでした」
内視鏡外科手術で得られる3つのメリット
小児患者さんが怖がらないよう可愛い張り紙が一面に治療後にもらったお礼の手紙など大切に壁へ飾っている
 小児に対して内視鏡を用いるメリットは、大きく分けて3つある。最大のメリットは患部が拡大され、スタッフ全員で見ることができる点であり、その他に傷口の小ささ、術後の癒着が圧倒的に少ない点が挙げられる。
 「子どもの血管や臓器は小さいため、通常の開腹・開胸手術では直視下であってさえ見づらく、しかも執刀医しか見られないこともあります。しかし内視鏡外科手術であれば、患部はモニターに拡大されて映り、さらに手術室の全員で映像を共有できるので、より安全で確実な手術を目指すことが可能です」と、世川部長は内視鏡外科手術のメリットを語る。
 現在、小児内視鏡外科手術の適応症例は消化管・肝胆膵脾・泌尿生殖器から肺や胸腔疾患にまで広がり、今後はダヴィンチに代表されるロボット手術の導入が課題である。後輩の育成の中でも、女子医大ならではの女性内視鏡外科医の育成にも力を注いでいきたいと、世川部長は語る。
小児外科医の「覚悟と矜持」
 小児外科の対象となるのは、本来15歳未満の小児だが、実際には先天性の疾患が対象となるため、胎児や成人の患者に対する手術もあり、小児外科医は「小児を得意とする一般外科医」だと世川部長は語る。
 「恩師の宮野先生より、『小児外科医とは、神様が作り忘れたものを作り、作り間違えたものを作り直す。これを天職とする』という言葉をいただきました。小児外科の手術は、取る手術(摘出術)よりも、作る手術(形成術)が多いことが特徴です。私は、ただ単に子どもが好きというだけでなく、子どもの長い人生を常に想い、子どもの命の重さを誰よりも知り、子どもの身体にメスを入れることの意味を謙虚に深く考え、両親とともに子どもを育む、それが小児外科医の覚悟と矜持だと考えています」

 

※内容は2020年4月27日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

(PR)
医療機関情報
施設名 東京女子医科大学病院
フリガナ トウキョウジョシイカダイガクビョウイン
TEL 03-3353-8111(大代表)
住所 東京都新宿区河田町8-1
ホームページはこちらから(別ウインドウが開きます)

 

診療時間
9:00〜16:00

□9:00〜12:00(第3を除く土曜)  【休診日】日、祝、第3土曜