くらたに・とおる
1986年、神戸大学医学部医学科卒業。同年、大阪大学医学部第一外科に入局。93年、大阪府立病院。大阪府立急性期・総合医療センター心臓血管外科参事。大阪大学医学部低侵襲循環器医療学寄附講座教授などを歴任。22年1月より現職。
日本経カテーテル心臓弁治療学会理事、
3学会構成心臓血管外科専門医、日本外科学会認定外科専門医
大動脈瘤ステントグラフト内挿術の開発から携わり、今も第一線で患者の命を救い続けるのが、大阪警察病院血管内治療センターでセンター長を務める倉谷徹医師だ。従来の人工血管置換術に代わる治療の実態に迫るべく、詳しい話を伺った。
患者の一生を考えた
戦略的な治療計画の立案と術後フォロー
より高度で精密なハイブリッド手術室を完備
 1993年、倉谷医師は世界初の解離性大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術を加藤雅明医師(森之宮病院心臓血管外科顧問)と共に行った。以来医療機器メーカーと協力しステントグラフトの改良にも取り組み、治療の発展・普及に貢献している。同治療では脚のつけ根の大腿動脈を露出させ、カテーテルを用いてステントグラフトを大動脈瘤の生じた場所に留置する。切開は約3センチに留まり、治療は1時間〜1時間半で終わる。現在、適応となる胸部下行大動脈瘤のほぼ100%、腹部大動脈瘤の約60%、臓器血流不全や破裂を伴う急性B型大動脈解離において実施している。「低侵襲ではありますが、人工血管置換術と同じかそれ以上の術後成績が期待できなければ行いません」と倉谷医師は断言する。
 術前には将来的な追加治療の可能性も把握しておく。大動脈瘤の発症には動脈硬化が関係しているため、他の部位での発症も考えられる。「問題が起きた、さてどうしよう」という対応ではなく、最初の治療から、患者の一生を戦略的に支えていくための計画を立案・提示する。治療後も、必ず自身が定期的なフォローを行う。遠方住まいの高齢者など来院が難しい場合には、CT画像を送ってもらい電話で所見を伝えているという。
大動脈疾患を見逃さない
包括的な治療を提供する医療体制
 「低侵襲治療は選択肢の1つであって、すべてではありません」と倉谷医師は言う。実際に、上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤の一部は適応にならない。開胸・開腹を伴う人工血管置換術をはじめとする外科的な治療経験が豊富な病院に相談することで、患者はより自分に合った治療と巡りあえる。ただ、上行大動脈瘤や弓部大動脈瘤に対する新しいステントグラフトも医療機器メーカーと協力して開発中であり、数年以内の実用化が見込まれる。
 大阪警察病院は、2024年に新病院として生まれ変わる。血管内治療と外科的手術を同時に行うことができるハイブリッド手術室を増設予定であり、治療の幅はさらに広がる。心臓血管外科、循環器内科、麻酔科などが連携し、頭の先から足の先までのすべての血管をチーム医療で治療する構想もある。
 「治療を提供するだけでなく、〝患者さまの一生を考えた医療〟で健康と生活をサポートします。安心してご相談してください」と倉谷医師は、最後に優しく呼びかけてくれた。

 
 
 

※内容は2022年1月31日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 大阪警察病院
院長 澤 芳樹
TEL 06-6771-6051
住所 大阪府大阪市天王寺区北山町10-31
公式Webサイト(別ウインドウ)

 

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