「良医の視点」を皆さまの熱いご要望によりweb公開決定!(2017.4月〜現在まで・公開中)週刊新潮にて掲載

もりの・みちはる
医学博士。1987年、大阪市立大学医学部卒業。97年、米国アーカンソー州立大学脳神経外科留学。2007年、大阪市立大学大学院医学研究科脳神経外科学准教授。10年、東京都立神経病院脳神経外科部長。14年、東京都立神経病院てんかん総合治療センター長兼任。17年4月から現職。大阪市立大学客員准教授。日本脳神経外科学認定脳神経外科専門医。2018年開催予定の第41回日本てんかん外科学会会長を務める。著書に『写真と動画で学ぶ“てんかん手術”―難治性てんかんに対する手術の極意を伝授―』
米国で習得した側頭葉てんかんの最先端治療で
日本でもトップクラスの豊富な実績を上げている
「てんかん救急」を日本で先駆けてスタートして患者さんを救う
経シルビウス裂到達法による選択的海馬扁桃体摘出術を極める
「日本には約100万人のてんかん患者さんがおり、そのうち10万~20万人は抗てんかん薬の服薬にもかかわらず、てんかん発作が抑制できずに慢性化し、結婚や就職等に支障をきたして困っております。そうした患者さんは、ぜひ当院にいらしてください」と森野名誉院長


患者さんとのコミュニケーションを大切にし、患者さんの立場に立って診療を行う

 熊谷総合病院では、2017年4月に「てんかんセンター」を開設した。同センターを統括する森野道晴名誉院長は、2018年開催予定の第41回日本てんかん外科学会会長を務めるなど、日本におけるてんかん外科治療の第一人者で、30年にわたる治療経験の中で豊富な実績を上げている。
 「1997年に母校の大阪市立大学脳神経外科で『てんかん外科治療』を私が中心になって立ち上げることになり、米国のアーカンソー州立大学脳神経外科に留学し、最も外科治療の適応となる側頭葉てんかんに対する最先端の手術法を学んできました。側頭葉の脳実質を温存して海馬のみを切除する低侵襲的な『経シルビウス裂到達法による選択的海馬扁桃体(かいばへんとうたい)摘出術』がそれです」と森野名誉院長はてんかん外科治療とのかかわりを話す。
 森野名誉院長がライフワークとしている側頭葉てんかんの外科治療では、海馬委縮がある海馬硬化症の場合は、米国において高度な手技を習得した経シルビウス裂到達法による選択的海馬扁桃体摘出術を行う。

脳をできるだけ温存する難易度の高い低侵襲手術法
最新顕微鏡を使って、繊細で高度な手技を行う
 「側頭葉を大きく切除すると、切除する反対側、つまり右なら左目の4分の1程度の視野が欠けたり、言語優位側の側頭葉の場合は、言語障害(失語)がでたりすることがあります。経シルビウス裂到達法による選択的海馬扁桃体摘出術は、そうした障害の危険が少ない手術です」
 患者さんにとっては、脳をできるだけ切除せずに温存する低侵襲の手術ではあるが、「なかなか普及していないのが現状です」と森野名誉院長。というのも、経シルビウス裂到達法によるアプローチの場合、血管等を損傷する確率が高く、合併症のリスクを伴うからである。
 「豊富な症例数があれば、トラブルの心配は極めて少なくなります。経シルビウス裂到達法は、シルビウス静脈を傷つけないように丁寧に剥離していくのが難しく、それを繊細に的確に行うためには経験が必要といえます。大事なことは、手術をあきらめずに貫き通すという強い意志をもつことです」
 側頭葉てんかんの中で、海馬萎縮がなく記銘力が温存されている症例に対しては、海馬を切除せずに温存して、てんかん発作を緩和することを目的とした海馬多切術を行う。脳を切除すると明らかに記憶が落ちたりするため、海馬の表面に切り込みを入れて治療する。
PET検診センターの完成でてんかんの的確な診断を実現
 熊谷総合病院では2018年夏にPET検診センターが完成する予定だ。デジタルPET(ポジトロン断層法)2台を導入し、MEG(脳磁図)検査も行われる。MEGは、脳内にわずかに発生する磁場変化をとらえて脳の機能を解析する検査で、脳の診断の精度が確実に向上し、てんかんセンターにおける的確な診断を実現できる。
「てんかん患者は愛すべし」のモットーで診療に臨む
側頭葉外てんかんの場合、発作波の広がりが多様であるため、脳の機能を判断する目的も兼ねて、頭蓋内電極を用いて評価を逐次行いながら手術をすすめていく
 森野名誉院長は、「てんかん患者は愛すべし」のモットーで診療に臨んでいる。側頭葉てんかんの患者さんの場合、粘着質で激高しやすい性格をもっている人もいる。満足できないと、もめごとに発展することも少なくない。「患者さんによく怒ることもあります。喧嘩になるのを恐れて過保護に接したりする医師もいますが、何をいっても無理だと放置せず、人間同士でしっかり向き合うことが大事です」
 森野名誉院長によると、今も忘れられないのが、第1号の患者さんであるという。「側頭葉てんかんの患者さんで、『直接手術をするのははじめてです」と正直に伝えました。本来なら、不安になって『ちょっと待ってください』といわれると思っていましたが、『こんなに自分の病気を一生懸命になってくれる先生はいませんでした』といって手術を受けてくれました。その方が1例目だったから、てんかん患者さんの立場に立って診療することの大切さを知りました」
てんかんの外来診療を行い「てんかん救急」もスタート
側頭葉てんかんの外科治療の第一人者である森野名誉院長が手がける経シルビウス裂到達法による選択的海馬扁桃体摘出術。全般てんかんにおける失立転倒発作を治療する脳梁離断術や大脳半球離断術なども多数手がけている
 同院では、毎週火曜日と木曜日に「てんかん外来」を設けている。「薬を処方されても発作が抑えられない場合は、遠慮せずに当院に来ていただければと思います。安心して手術を受けてもらえます」と森野名誉院長。
 2017年5月から、脳神経外科の救急を24時間体制で対応できるようした。夜間・休日にてんかん発作を起こした場合も、脳神経外科救急で対応する。「てんかん救急ができる病院は、日本でははじめてだと思っています。てんかんの知識と経験が豊富な専門医が24時間いつでも対応します」
 森野名誉院長は、北海道の北斗病院でも月1回てんかん外科治療を行っている。北斗病院は、社会医療法人北斗グループの基幹病院で、十勝地域を拠点に、高度医療を実践している。

※内容は2017年12月14日 掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
法人名 医療法人
施設名 熊谷総合病院
フリガナ クマガヤソウゴウビョウイン
TEL 048-521-0065
住所 埼玉県熊谷市中西四丁目5番1号
病床数 310床
診療科目 内科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、外科、整形外科、小児科、脳神経外科、泌尿器科、産婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、形成外科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科(中村信一)
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2018年夏に、まずPET検診センターがオープンする
高度医療を提供するため2020年秋のグランドオープンを目指している

 

受付時間
8:30〜11:30

△第2・第4土曜は休診となります

 
 

医療機関情報
法人名 社会医療法人 北斗
「革新に満ちた医療への挑戦と新たなる組織価値の創造」を基本理念に北海道十勝地域で高度医療を提供する北斗病院。社会医療法人北斗グループの基幹病院である
施設名 北斗病院
フリガナ ホクトビョウイン
TEL 0155-48-8000
住所 北海道帯広市稲田町基線7番地5
病床数 267床
診療科目 脳神経外科、脳神経内科、神経内科、頭頸部外科、心臓血管外科、循環器内科、呼吸器内科、消化器外科、消化器内科、乳腺外科、腫瘍外科、整形外科、リウマチ科、内科、外科、小児科、形成外科、耳鼻咽喉科、麻酔科(大島勉)、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、病理診断科、人工透析内科、腎臓内科、緩和ケア内科、歯科、歯科口腔外科、肛門外科
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