「良医の視点」を皆さまの熱いご要望によりweb公開決定!(2017.4月〜現在まで・公開中)週刊新潮にて掲載

いのうえ・けいじ
1991年、京都府立医科大学卒業、京都府立医科大学付属病院第二内科入局。93年、朝日大学村上記念病院循環器科、95年、京都府立医科大学付属病院第二内科を経て99年より京都第二赤十字病院循環器内科。日本循環器学会認定循環器専門医・京都府立医科大学臨床准教授。ICD研修修了・両心室ペーシング研修修了
痛みの少ない冷凍バルーンアブレーションで
心房細動を治療しQOLの向上や予後改善を目指す
救急患者の受け入れで府内トップクラスを誇る
 京都府内の救急患者受入数がトップクラスで、心肺停止といった緊急性の高い患者も積極的に受け入れている京都第二赤十字病院。同院の循環器内科には不整脈治療の豊富な経験と実績のある2名の医師が在籍しており、デバイス治療とアブレーション治療を、患者の症状に合わせて、より適切に行っている。
1泊2日での退院も可能な負担の少ない「冷凍バルーンアブレーション」
症状や検査、治療方法について患者さんへ分かりやすく丁寧に説明を行っている
 頻脈性不整脈の治療法として、2016年より井上副部長が積極的に取り組んでいるのが「冷凍バルーンアブレーション」(以下:冷凍バルーン)と呼ばれる治療法だ。不整脈の原因となる心房細動は、左心房に肺静脈から異常な信号が発生し規則的な興奮が乱れることで起きる。冷凍バルーンは、この異常な電気信号を遮断するために、4本の肺静脈の左房との接合部を冷凍凝固壊死させるもので、先端にバルーンを付けたカテーテルを足の付け根から挿入して接合部まで到達させ、バルーンに冷却剤(亜酸化窒素)を挿入して接触部をマイナス40〜60度の状態にし、3~4分かけて冷凍凝固する。
 「以前は、高周波を使い左房の肺静脈流入部を焼灼、隔離する術式が主流でした。しかし冷凍バルーンの方が、手術時間が短時間で済み、さらに痛みも少なく麻酔が浅くて済むために術後の回復が早いというメリットがあります。歩行は術後6~8時間後から可能で、鎮静から覚め、むかつきがなければ飲食もすぐにできます」
 入院期間の基本は3泊4日だが、最短で1泊2日も可能で、同院では90歳で手術を受け、元気に回復した患者さんもおられる。現在同院でのアブレーション治療件数は、※2017年には294例にまで及んでおり、そのうち187例が冷凍バルーンによる治療である。
心房細動の根治でQOLの向上や予後改善
(脳卒中・心不全・認知症の予防)を目指す
 心房細動のアブレーションは再発率が高いが、冷凍バルーンを使用した場合は、高周波通電に比べ再アブレーション率や術後の再入院率が低率に抑えられるという結果も出ている。
 「一般的に心房細動の再発率は発作性で50%、慢性の場合には80%になります。しかしアブレーション治療は複数回可能であり、2、3回手術を行えば、発作性でほぼ100%、慢性でも90%の確率で正常のリズムへの回復が見込めます。さらには、20年以上経過した慢性の心房細動でも治療可能な場合がありますので、諦めない事が大切です」
 心房細動という不整脈は、すぐに命に関わる病気ではない。しかし放置すると息切れや動悸といったつらい症状でQOL(生活の質)が落ちるだけではなく、脳梗塞や心不全を発症しやすくなる。さらには最近では睡眠時無呼吸や認知症との関わりも指摘されており、多様な病態を来たす症候群としてとらえるべき病気である。
 「より多くの人に心房細動を放置することの怖さや、痛みや負担が少なく成績の良い治療法があることをもっと広めていきたいですね。そして、たとえ慢性化していても、決して諦めずにアブレーション治療をご提案していきたいと思います」と、井上副部長は笑顔で語ってくれた。

※2017年1月〜12月

 

※内容は2019年1月17日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 京都第二赤十字病院
フリガナ キョウトダイニセキジュウジビョウイン
TEL 075-231-5171
住所 京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355番地の5
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