「良医の視点」を皆さまの熱いご要望によりweb公開決定!(2017.4月〜現在まで・公開中)週刊新潮にて掲載

どい・かつみ
1990年大阪大学大学院医学研究科修了。同年米国国立予防衛生研究所客員研究員。95年大阪大学医学部耳鼻咽喉科学講座講師、2000年同病院教授を経て、2010年より現職。日本耳鼻咽喉科学会理事、日本聴覚医学会理事、日本めまい平衡医学会理事、日本耳科学会理事、日本小児耳鼻咽喉科学会理事
高度な技術力を要する
進化する人工内耳手術
 近畿大学病院における人工内耳手術は、2010年土井勝美教授の着任から開始され、今年8月現在で累計309件の手術総数である。一日3件の執刀を行うこともあるという。人工内耳手術は、最近は1時間半〜2時間と手術時間が大幅に短縮されている。医療技術の進歩により、皮下に埋め込むインプラントの小型化・高性能化が進み、3テスラMRI検査も可能となった。目立ちにくい『コイル一体型』の受信装置の開発など患者のニーズに合わせた様々な機器が登場したことにより、治療の選択肢がますます広がっている。
 人工内耳手術は、蝸牛に電極を埋め込むという緻密で繊細な手術であるため、医師の高い知識と技術力が要求される。「医師は、常に最新の知識・技術を学び、人工聴覚器の性能を最大限発揮できるように務めるべき」と、土井教授は、ドイツ、ロシア、オーストラリアなど人工内耳先進国を頻繁に訪れ、最先端の人工聴覚器に触れることで、日々研鑽を積んでいる。
手術時期が術後を左右
早期治療で症状改善
 近畿大学病院では、聴覚領域を専門とする言語聴覚士が3名常勤し、医師の指示のもと人工聴覚器リハビリを行っている。先天性高度難聴の子供では、人工内耳を装用して、先ず「『音』のある世界」の理解から始まり、最終的なゴールである「言語の習得」を目指して濃厚なリハビリを行う必要がある。両親や療育機関との連携もとても重要だ。
 2014年、小児人工内耳手術の適応年齢は、『1歳』からに改定された。「受診が遅れれば、手術やその後に行うリハビリの成績は低下します。小児では手術時期が半年違うだけで、小学校就学時の言語能力と認知能力にも大きな差が出てくるため、出来るだけ早く手術を行うことが大切です」と土井教授は指摘する。ドイツでは『生後6か月』から手術適応になっていて、今後は日本でもさらなる適応年齢の引き下げが期待される。
 一方、高齢者における高度難聴は、その危険性が今も過小評価されている。他人とのコミュニケーション障害は、家族や社会からの孤立を招き、『認知症」を発症する最大の危険因子である。人工内耳手術が必要な高度難聴でも、「高齢だから」、「手術が怖いから」、「先が短いので」などの理由で、手術を躊躇する患者も多いという。「難聴を適切に治療し、健康寿命を伸ばし、充実した残りの人生を楽しんで欲しい」、「『聞こえ』を取り戻すため、人工内耳手術という選択肢があることをより多くの患者に知って欲しい」と土井教授は言う。難聴の正しい診断と適切な治療についての啓蒙活動として、土井教授は、毎年3月と8月に「聞こえ」や「人工聴覚器」に関する市民公開セミナーを開催している。また、2019年11月6日(水)〜8日(金)に大阪国際会議場にて「第64回日本聴覚医学会 総会・学術講演会」を会長として主催するが、「人工内耳」や「人工聴覚器」は同学会メインテーマの一つである。

 

※内容は2019年9月11日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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