「良医の視点」を皆さまの熱いご要望によりweb公開決定!(2017.4月〜現在まで・公開中)週刊新潮にて掲載

たなか・いちろう
1982年慶應大学医学部卒業後、慶應大学形成外科入局。87年埼玉医大総合医療センター。90年静岡日赤病院形成外科部長。95年弘前大学形成外科講師。98年済生会宇都宮病院形成外科医長。99年栃木県立がんセンター頭頚科・耳鼻咽喉科医長。2000年トロント大学形成外科留学。01年慶應大学形成外科専任講師を経て12年より現職。日本形成外科学会認定形成外科専門医

 

顔面神経麻痺などの顔面の疾患は患者の心理的負担感が大きく、社会生活を送る上で障害となる場合も少なくない。そこでマイクロサージャリーを適用した外科的アプローチで、顔面神経麻痺や腫瘍切除後の機能的、形態的な再建治療に取り組む数少ない医療機関として、全国から患者が集まる東京歯科大学市川総合病院形成外科の田中一郎部長に、同院の独自の取り組みについてお伺いした。
マイクロサージャリーで
機能と見た目の両方を回復
 東京歯科大学市川総合病院は、市川市の基幹病院、さらにはあらゆるガンの拠点病院として地域医療を支えているが、田中医師が部長を務める形成外科は、顔面神経麻痺、悪性腫瘍切除後再建(乳癌、口腔癌、皮膚癌、骨軟部組織腫瘍)、眼瞼の形成(眼瞼下垂や外反・内反症)、リンパ浮腫を診療の4本柱に据え治療を行っている。
 中でも特筆すべきは、全国でも数少ない顔面神経麻痺に対する外科的アプローチによる治療だ。顔面神経麻痺のおよそ70%はウィルスが原因となって起き、急性期では薬物治療が、その後は顔面神経の再建術や表情の形成手術が主に行われるが、同院の特徴はこれらの外科治療にあると田中部長は語る。
 「発症から数ヶ月〜1年の麻痺後早期には、顔面神経再建術を行うことで、麻痺が改善する場合があります。下腿から採取した神経も利用して顔面神経に繋ぎますが、神経の太さは1㎜以下の場合もあり、手術用の顕微鏡を用いて手術を行うマイクロサージャリーを行っています」
独自の手術法を開発し
世界的にも注目を集める
 高度なマイクロサージャリーの技術は、陳旧性(麻痺発症後1〜1・5年後以降)と呼ばれる、症状が固定した時期の治療にも用いられていると田中部長は説明する。
 「陳旧性に対する治療として、当院では側胸部の筋肉の一部を血管や神経ごと顔面に移植して失った表情を回復させる動的再建も行っています。通常は1㎝程度の厚さの一つの筋肉を移植しますが、当院では口唇周囲の多くの表情筋運動を考慮して、複数の筋肉を4〜5㎜の厚さで移植することで、表情や外見の点でも優れた手術法を独自に開発し、世界的にも注目を集めています」
 このほかにも眉・眼瞼や口角が下がって顔面が左右非対称になった状態を修復する静的再建術や、後遺障害として出る顔面拘縮(眼瞼や頬のこわばり)や病的共同運動(口の動きで眼瞼が閉じてしまう)などに対して手術やボトックスによる治療を行っており、顔面神経麻痺に悩む患者が全国から来院しているという。
顔面神経麻痺の治療は
社会復帰にも繋がる
 また、口腔癌の術後の口腔機能や外貌修復の回復に血管を繋いで皮膚や骨を移植する治療や、乳癌術後の自家組織移植による乳房再建、1㎜以下の細いリンパ管と静脈を繋いでリンパ液を血管に流す方法でのリンパ浮腫治療など、マイクロサージャリーの技術を使ったオンリーワンの治療も数多く実践している。
 「顔面の麻痺や障害は隠すことが難しいだけに、機能面だけではなく形態的にも回復させることが社会復帰に繋がります。麻痺回復後も残る後遺障害も含め、形成外科的アプローチで治療ができることを知らない患者さまも多いので、悩んでいる方はぜひ一度相談に来ていただきたいですね」と、田中部長は、顔面神経麻痺に悩む患者に積極的な治療を呼びかけている。

 

※内容は2019年12月25日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 東京歯科大学 市川総合病院
フリガナ トウキョウシカダイガク イチカワソウゴウビョウイン
TEL 047-322-0151(代表)
住所 千葉県市川市菅野5-11-13
ホームページ(形成外科)はこちらから(別ウインドウが開きます)
ホームページ(顔面神経専門外来)はこちらから(別ウインドウが開きます)

 

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