まつまる・ゆうじ
医学博士。1987年、筑波大学医学専門学群卒業。96年、Service de Radiologie, Hopital de Bicetre, Universite Paris XI留学。97年、筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。2000年、筑波大学臨床医学系講師。03年、筑波大学大学院人間総合科学研究科講師。同年、International Master Degree in Neurovascular diseases sponsored by Paris Sud University(France)and Mahidol University(Thailand)。昭和大学兼任講師、公益財団法人冲中研究所研究員、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)専門委員、日本脳神経血管内治療学会理事。日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医、日本脳神経外科学会認定脳神経専門医
脳の病気で悩んでいる人たちへのアドバイス
「信頼できるかかりつけ医に相談するのが
一番の近道であり確実な方法です」
脳神経外科における治療は、開頭手術と血管内治療に大別される。このうち血管内治療は、患者に低侵襲の治療として注目されている。血管内治療の脳動脈瘤コイル塞栓術、経皮的頸動脈ステント留置術について、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医など多くの専門医から支持された虎の門病院脳神経血管内治療科部長の松丸祐司医師に話を聞いた。
脳血管内治療は患者さんの負担が少ない治療法
 脳動脈瘤(りゅう)は、脳の血管にできた瘤(こぶ)で、それが破裂するとくも膜下出血になります。将来的に破裂の可能性が高かったり、あるいは破裂しなくても症状が出たりした場合は、治療を考慮します。
 治療法には開頭手術と血管内治療があります。血管内治療は、頭部を切らないので、脳や神経が傷つく可能性が少なく患者さんの負担が少ない治療法です。血管内治療はカテーテル(血管内に通す細い管)、コイル(プラチナ製の細い糸)、ステント(金属の筒)といったさまざまな道具を使って行います。
 脳動脈瘤コイル塞栓術は、脳深部のもの、入り口が狭い形のものに向きますが、昨年末から今年はじめにかけて血流改変ステントが登場し、入り口が広い形のものも治療できるようになりました。網の目が細いチューブみたいなステントを動脈瘤の前に置くと、血流が停滞し、血栓ができて動脈瘤が閉塞します。コイル塞栓術では治療が難しいとされる、1㎝以上で、内頸動脈にあって、出血していない未破裂動脈瘤に適用されます。
 動脈硬化で細くなっている頸動脈狭窄は、基本は薬物による治療を行います。しかし、一度でも脳梗塞や目の症状があったり、狭窄が高度であったりした場合は、血行再建治療が必要になります。外科治療である内膜剝離(はくり)術と、血管内治療である経皮的頸動脈ステント留置術があり、全身状態や血管の状態によりどちらの治療が適切かで選択します。
安全な治療のために大事なことは想定外が起きないように準備すること
 脳血管内治療は長さ約1・5mのカテーテルの先にある2~3㎜の動脈瘤を標的として治療を行います。とても難しい治療ではありますが、実際に経験を積み重ねていくと、手元とカテーテルの先端がつながっているような感覚になります。そうした一体感を究めることが重要な治療法といえるでしょう。
 安全な治療を行うために大事なことは準備です。まず治療を行う前に検査を徹底します。血管造影を行い、読影して病気がどういう状況にあるかを100%理解します。疑問点があれば曖昧(あいまい)にしておくことがないようにしないと、トラブルのもとになります。そして、何が起きても対応できるようにします。つまり想定外な事態が起きないように備えるわけです。
 治療中に動脈瘤が破裂したり、詰まっていたりすることがありますが、それらに対しても準備します。例えば、破裂した場合は、コイルとバルーン(風船)を使って血管を閉塞し、失血を止めるようにします。詰まっている場合は、血栓を薬で溶かしたり、回収したり、粉々に砕いたりします。
セカンドオピニオンで主治医との信頼関係を高める
 症状がなくて、偶然に未破裂の動脈瘤が見つかることがあります。患者さんは蒼白な顔をして外来に来られたりしますが、「破裂の確率が1%あるかどうかで、99%大丈夫ですよ。ゆっくり一緒に考えてみましょう」とお話ししています。
 動脈瘤の破裂を防ぐための方法では、煙草を吸っていれば煙草をやめる、コレステロールが高ければ下げ、糖尿病などの合併症があれば、まずそれを治療することが大切です。
 脳血管内治療の上手な医師の選び方としては、セカンドオピニオンが一つのいい方法だと思います。患者さんは主治医の先生に悪いと思うかもしれませんが、そんなことはありません。セカンドオピニオンの医師が「手術がベスト」といった同じ意見であれば、主治医との信頼関係がより高まります。だから、私は常にセカンドオピニオンをおすすめし、要望があれば紹介状を書くようにしています。紹介状についていやな顔をする先生がいますが、それが縁の切れ目で、縁がなかったんだと思えばいいのです。
 私自身が患者になった場合は、該当する診療科の医師に聞き、その先生から紹介してもらいます。一般的には、信頼できるかかりつけ医にまず相談するのがいいでしょう。それが一番の近道であり確実な方法だと思います。

※2016年9月30日 掲載

 

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医療機関情報
施設名 虎の門病院
フリガナ トラノモンビョウイン
TEL 03-3588-1111(代)
住所 東京都港区虎ノ門2丁目2番2号
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