やなぎ・たけし
1993年名古屋市立大学医学部卒業。98年同大大学院卒業。同年名古屋第二赤十字病院放射線科。99年県立愛知病院放射線科・診療科医長。01年放射線医学総合研究所重粒子医科学センター。11年名古屋市立西部医療センター放射線治療科、13年名古屋市立大学病院中央放射線部副部長などを経て、18年より同職。
日本放射線腫瘍学会代議員





入院や激しい副作用により、日常生活に支障が出ることを恐れてがん治療をためらう患者は少なくない。そこでがんに対する放射線治療の中で、通院による治療が可能で、さらに副作用が少ないため、患者が働きながら治療を受けることを可能にした「陽子線治療」が、日本でも広がりを見せている。
そこで放射線治療のトップランナーの1人として、陽子線治療に取り組む成田記念陽子線センター・栁剛院長に、陽子線治療の現状や特徴についてお話を伺った。
治療効果が高く、
副作用も少ない「陽子線治療」
白を基調としておりリラックスして治療を行える陽子線治療室
 陽子線治療は、最新のがんに対する放射線治療の一種で、水素の原子核である陽子を光速近くまで加速してがん細胞に当てることで、がん細胞の増殖を抑える治療法だ。
 愛知県・豊橋市にある成田記念陽子線センターは、全国的にもまだ数が少ない陽子線治療を行なう医療施設として、2018年4月に、東海地方では民間初施設として誕生した。
 「陽子線の場合、体内で放射線を止めることができ、さらに止まる直前に大きな放射線量を与える特徴があるため、従来のエックス線と比較すると、がんに対してピンポイントで効果の高い照射が行え、さらに正常細胞に対する影響も最小限に抑えることができます」と、同センターの開設時から院長を務める栁剛医師は、陽子線治療のメリットを強調する。
患者の身体的負担が少なく
通院での治療が可能
 現在、治療の適応となっているのは頭頸部腫瘍、肺がん・消化管腫瘍・肝胆膵腫瘍・泌尿器腫瘍・骨軟部腫瘍・転移性腫瘍(肝、肺、リンパ節)だが、小児がん、前立腺がん(転移を有するものを除く)、頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)、手術による根治的な治療が困難と判断された骨軟部腫瘍のみ、保険適応となっている。同センターでは、これまでに110人の治療実績があるが、陽子線治療の場合、ひどい口内炎や照射部分の外皮が火傷状になるといった副作用がほとんどないため、働きながら治療を受けることが可能だという。
 「治療を開始すると、連続で通院していただき、1回およそ20〜60分の治療を受けていただきます。照射回数は疾患の状況によりますが、10〜30回程度が目安です」と栁院長。当センターは新幹線の乗り入れもある豊橋駅から徒歩3分とアクセスが良く、さらに近隣にはウィークリーマンションやホテルなども点在しているので、遠方からの治療にも不安はないという。
患者一人ひとりに寄り添った
がん治療の実現が目標
 がん治療のためとはいえ、化学療法の副作用に不安を持つ人や、体にメスを入れることに抵抗感が強い人は多い。また年齢や基礎疾患のために、全身麻酔が難しい患者もいる。そういう患者にとって、陽子線治療は有効な選択肢だと、栁院長は語る。
 「がんと診断されながら、治療の勇気が持てずに病院から足が遠のき、症状を進行させてしまう方は少なくありません。そのため陽子線のように、体への負担も副作用も最小限で根治を目指せるがん治療があることを、1人でも多くの患者さまに知っていただくことが現在の課題です。今後は当センターでも、陽子線治療と同時に温熱治療を行なったり、診療時間を延長するなど、患者さま一人ひとりに寄り添った医療を今まで以上に目指していきたいと考えています」と、栁院長は今後の抱負を語ってくれた。

 

※内容は2020年4月27日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 成田記念陽子線センター
フリガナ ナリタキネンヨウシセンセンター
TEL 0532-33-0033
住所 愛知県豊橋市白河町78
ホームページはこちらから(別ウインドウが開きます)

 

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