つだ・やすとし
1996年、群馬大学医学部卒業。2001年、東京女子医科大学大学院修了。
佐久総合病院等を経て2018年、山梨県立中央病院。同年より現職。
医学博士、日本外科学会認定外科専門医、3学会構成心臓血管外科専門医
津田部長の赴任により本格的に稼働を始めた
大動脈瘤ステントグラフト内挿術
 山梨県の高度急性期・急性期医療支えている山梨県立中央病院。その中で循環器内科と心臓血管外科が密接な連携をとりながらチーム医療を進める場として設けられた「循環器病センター」、2018年の赴任以降、腹部、胸部、両方に対する大動脈瘤ステントグラフト内挿術に対して中心的な役割を担っているのが心臓血管外科部長の津田泰利医師だ。
大動脈瘤ステントグラフト内挿術は
予防に限らず破裂後の救命に役立つ場合も
傷口が小さく低侵襲にて行う大動脈瘤ステントグラフト内挿術
 大動脈瘤とは、大動脈の壁の一部が瘤のように膨んだ状態のもの。瘤ができても自覚症状はほとんどないが、一旦破裂してしまうと救命率は極端に低下するため、別名「サイレントキラー」とも呼ばれている。破裂防止には予防的手術が必要で、瘤の大きさが概ね胸部で50㎜、腹部で45㎜を超える場合は手術適応の対象となる。
 大動脈瘤の手術は、以前は全て開胸もしくは開腹で行われていたが、20㎝程度切開する非常に侵襲が大きい手術だった。そこで低侵襲の手術法として登場したのが「大動脈瘤ステントグラフト内挿術」だ。この手術は脚の付け根(鼠径部)を数センチ切開して太い動脈を露出させ、そこから人工血管に針金状の金属を編んだ金網(ステントグラフト)を内包したシースを、カテーテルを用いて瘤がある場所まで運んで留置することで血流の新たな導管を作って瘤への血流の流れを塞ぐことで、瘤がそれ以上成長して裂傷・破裂するのを防ぐための処置だ。
 「開胸手術の場合、胸部で4〜8時間、腹部で3〜4時間の手術時間が必要でしたが、ステントグラフト内挿術の場合は最短で胸部は1時間、腹部は1時間半程度で終わります。麻酔も基本は全身麻酔ですが、局所麻酔が可能なケースもあります」と津田医師は語る。
 瘤の場所や血管の状態などにより適応が限定されるものの、現在同院では胸部大動脈瘤の場合で5割、腹部の場合にはおよそ8割をステントグラフト内挿術で対応しているという。
 「以前、すでに破裂がおきた状態で救急に運ばれてきた50代の女性は、すでに出血によるショック状態から重篤な状況でした。しかし緊急にステントグラフト内挿術を行ったことで止血ができ、わずか1週間後には元気に退院されました。まさにステントグラフト内挿術を適応しなければ、救命が難しかったケースでしたね」と津田医師はステントグラフト内挿術の有益性を強調する。
大動脈瘤は予防が全ての
疾患であることを知って欲しい
 大動脈瘤は加齢によりリスクが高まるため、津田医師は70歳以上になったら定期健診を受けることを強く勧める。
 「胸部の動脈瘤は肺がん検診用のCTで、腹部の場合にはエコー検査で発見できるケースが少なくありません。大動脈瘤は予防が全ての疾患です。ステントグラフト内挿術であれば、最短術後3日程度で退院でき、すぐに通常の社会生活への復帰も可能です。発見されたら、出来るだけ早期に専門の医療機関を受診してください」と最後に津田医師は、検査と早期受診の大切さを強く呼びかけた。

 

※内容は2020年11月26日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

 

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医療機関情報
施設名 山梨県立中央病院
TEL 055-253-7111
住所 山梨県甲府市富士見1-1-1
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