にし・さとし
医学博士
3学会構成心臓血管外科専門医
日本外科学会認定外科専門医
2012年につくば医療圏(つくば市,常総市,つくばみらい市)で、民間病院としては初めて地域医療支援病院の認定を受け、地域医療を支える中核病院としての役割を担っている筑波記念病院。今回は、同院の大動脈血管内治療センターのセンター長として大動脈血管内治療に取り組んでいる西智史センター長に、大動脈瘤ステントグラフト内挿術を中心とした大動脈血管内治療の取り組みについてお話を伺った。
多くの実績を誇る
大動脈瘤ステントグラフト内挿術
最新の医療設備を揃えたハイブリッド手術室
 大動脈の壁の一部が膨んでできる大動脈瘤は、破裂すると大出血を起こして命の危険もあるため、ある程度の大きさになった場合に、予防的手術が行われる。この時開胸/開腹手術に代わる低侵襲な術式として適用が増えているのが、カテーテルを使ってステントグラフト(人工血管に針金状の金属を編んだもの)を留置し、瘤への血流を塞いで成長を止める「大動脈瘤ステントグラフト内挿術」だ。同院では2011年から大動脈瘤ステントグラフト内挿術に取り組んでおり、近年は320件※を行っている。
大動脈解離の治療にも
ステントグラフト内挿術を
ハイリスク症例に適用
 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインは2020年に改訂され、現在は大動脈瘤破裂の治療や、亜急性期、慢性期大動脈解離の治療にもステントグラフト内挿術が適用されている。大動脈解離とは、胸や背中の激痛や吐き気が突然起こる命に係わる重大な病気だ。3層構造の大動脈の内膜部分にできた裂け目(エントリー)から中膜に血流が入り込み、大動脈の壁を縦方向に裂いていくものだ。大動脈解離が起きると、裂けた部分に血管腔(偽腔)ができ、本来の血管腔(真腔)を圧迫して脳、心臓、腹部内臓や下肢への血流が障害されて虚血を来したり、将来偽腔が膨らみ瘤化(解離性大動脈瘤)して破裂する場合がある。それを防ぐための治療として同院では、将来破裂のリスクの高い症例に対して比較的早い段階でステントグラフト内挿術を積極的に適用していると西医師は語る。
 「大動脈解離は、発症部位により上行大動脈(心臓を出てすぐの大動脈)から裂けるスタンフォードA型、背中の大動脈(下行大動脈)から裂けるスタンフォードB型の 2つに分類されます。致命的な合併症を起こしやすいA型は緊急手術の対象ですが、破裂や臓器虚血といった合併症を伴わないB型は保存療法が中心でした。しかし当院では、早期に大動脈血管内治療を適用することで破裂のリスク回避の可能性が高まると判断した場合に、積極的に大動脈血管内治療を行っています」
 大動脈血管内治療の適用が広がっている背景には、道具であるデバイスの進化、技術の向上、長期治療成績が分かってきたことであると、西医師は指摘する。
 「より細い動脈を通過できるロープロファイルなステントグラフトシステム、分枝動脈を温存できるステントグラフト、大動脈解離専用のステントグラフトやより小さい傷で治療が行える止血デバイスなど、技術の向上とともにデバイスも進化し、より多くの患者さまが安全に低侵襲な大動脈血管内治療を受けられるようになってきています」
患者負担の少ない
高度医療を実践していきたい
 すでに高度な大動脈血管内治療を実践している同院だが「今後は大動脈弁をカテーテルで人工弁に取り換えるTAVIや、カテーテルを用いた僧帽弁クリップ術であるMitraClip(マイトラクリップ)の実践を目指しています。当院にはハイエンドの血管撮影装置を設置したハイブリッド手術室もあります。患者さま負担の少ない高度医療を、今後も積極的に実践していきたいですね」と西医師は治療の重要性について語ってくれた。

※2017年1月~2021年6月

 
 
 
 
 

※内容は2021年7月28日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 筑波記念病院
TEL 029-864-1212
住所 茨城県つくば市要1187-299
公式Webサイト(別ウインドウ)

 

診療時間
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