たしろ・のりあき
2009年、防衛医科大学卒業。同年、防衛医科大学病院。10年、自衛隊中央病院。
11年、兵庫医科大学病院。12年、福岡記念病院を経て、18年より現職。
日本神経学会認定神経内科専門医
日本脳神経血管内治療学会認定脳血管内治療専門医
MRIガイド下集束超音波治療講習会修了
九州地区で先駆けて「集束超音波治療(FUS)」を導入し、その実践だけでなく認知・普及に力を注ぐのが福岡脳神経外科病院だ。低侵襲治療の一環としてどのような運用がなされているのか、脳神経内科医長・田代典章医師に詳しく話を伺った。
日常生活・社会生活での
支障を感じたときに検討してほしい
MRIと超音波によるメスを使わない画期的外科的療法を提供
 集束超音波治療(FUS)は、本態性振戦やパーキンソン病に伴う手のふるえに対する治療だ。MRIを併用しながら、ふるえの原因となる神経回路「視床腹側中問核」を超音波で熱凝固させる。従来の手術のように、頭蓋骨を穿孔する必要はない。治療直後からふるえが改善し、ペンで直線を引くことさえ難しかった患者が、渦巻きや文字を十分にそれと認識できるレベルで表記できるようになる。
 「ふるえの程度よりも、ふるえがご自身の日常生活・社会生活に支障をきたしていることを基準に検討してもらいたい治療です」と田代医師は語る。箸やコップを正常に使えないという患者だけでなく、マイクを握ったときや記帳のときに人目が気になるという患者の受診も多い。全身麻酔や手術の適応外となる患者にも適しており、年齢層も20〜80代と幅広い。
 集束超音波治療(FUS)において重要になるのが、超音波照射の精度だ。同院では最低3回の仮照射、0・5ミリ単位での調整により、視床腹側中問核の正確な熱凝固を行う。医師と会話しながら超音波照射と各種テストを繰り返すことで、患者一人ひとりの目標とするレベルまで回復を目指せる点も治療の満足につながっている。
新しい治療法だからこそ、
十分な説明と万全の体制を
治療の特徴など患者一人ひとり丁寧に説明

落ち着きのある洗練されたモダンな院内
 集束超音波治療(FUS)は低侵襲であるが、治療前に頭部剃毛が必要だ。治療用ヘルメットを固定する際には、ピンによる微量な出血がある。また、SDRが低い(骨密度のバラつきが大きい)場合には、効果が得られにくいことがある。同院ではこういった点についても事前に患者に十分に説明する。
 すでに40症例以上を経験している田代医師だが、症例によっては熊谷総合病院の阿部圭市医師、福岡みらい病院の宮城靖医師を招聘して万全の態勢で治療に臨む。両名とも、集束超音波治療(FUS)における国内のパイオニアだ。
 本態性振戦の有病率は人口の2・5〜10%、65歳以上に限ると5〜14%にも上る。しかし、ふるえ以外の症状がないためか歳のせいと片づけて未受診・未治療になっているケースが多い。「特にご高齢になると〝今さら治しても〟〝我慢するから大丈夫〟と治療に積極的になれないことが増えてきます。治療をきっかけとして外出したい、人と関わりたいという気持ちが戻ってくることがありますので、ご家族の方からも、ぜひ勧めていただければ」と田代医師は最後に優しい笑顔で呼び掛けた。

 
 
 
 
 

※内容は2022年1月31日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 福岡脳神経外科病院
TEL 092-558-0081
住所 福岡県福岡市南区曰佐5-3-15
公式Webサイト(別ウインドウ)

 

診療時間
9:00〜12:30

【外来休診日】日、祝、年末年始