とみなが・しんすけ
医学博士。1959年、京都大学医学部卒業後、同大学院博士課程修了。64年、京都大学医学部附属病院
脳神経外科勤務。70年、富永脳神経外科病院を設立し、その後富永病院に名称変更。73年より現職。
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医


診察日 毎週月曜日 9:00~
高い技術力を要する脳動静脈奇形(AVM)治療を実施し、他院で断られた難症例の手術も多く手掛けている富永病院。豊富な経験と実績をもとに、患者に寄り添いながら現場の第一線で活躍し続けている富永紳介理事長に話を伺った。
専門性を追求した高度治療で
難症例も積極的に受け入れる
豊富な経験と高い技術力を併せ持つ
脳神経外科医が19名在籍し、高度な治療を提供
 1970年に開院以来「一人でも多く救命し、一人でも多く後遺症なく社会復帰させること」を理念に掲げ、長年地域医療に貢献してきた富永病院。脳神経外科における「最後の砦」として、聴神経腫瘍や脳動静脈奇形(AVM)など、他院で治療を断念された様々な難症例患者も積極的に受け入れている富永紳介理事長のもとには、日本国内のみならず米国、韓国、インドネシア、台湾など海外からも患者が訪れるという。
 同院は、脳神経外科の専門病院として、より専門性の高い治療を追求し最新の医療機器を導入した治療センターを設立。更に整形外科、循環器内科なども開設し患者のニーズに対応できる体制を整えてきた。現在、富永理事長指導のもと19名の脳神経外科専門医が在籍し、顕微鏡下手術、内視鏡下手術、脳血管内治療、定位放射線治療など、豊富な経験を持つ医師やメディカルスタッフ達による高度なチーム医療を提供している。
危険な脳動静脈奇形
早期治療が大切
 通常、血液は動脈・毛細血管・静脈の順に流れており、動脈から流れてくる血液の圧力が静脈にかからぬよう、毛細血管が防波堤の役割を担っている。しかし脳動静脈奇形の場合、胎生期に脳血管の異常がおこり脳内で拡張・蛇行し、ナイダスと呼ばれる異常な血管の塊が生じてしまう。本来、毛細血管を介して繋がるはずの動脈と静脈がナイダスを介して直接繋がってしまうため、圧の高い血液が静脈へと流れ、激しい血流に耐えられずに破れてしまうことが多い。そのため、脳出血やくも膜下出血など危険な状態を引き起こす要因になっており、たとえ破れることがなくても、けいれんや頭痛、手足のまひなどの症状を引き起こし、発覚するケースもあるという。
 「脳動静脈奇形と診断された方の約70%は、突然脳出血やくも膜下出血を引き起こしています。20〜40歳代に多く見られ、特に30代、比較的若い方に多いのが特徴です。若い方は、余命が長く出血のリスクが累積しますが、特有の旺盛な再生力、回復力がありますので、脳動静脈奇形がみつかったら、早めに手術を受けるのがよいでしょう。60歳以降の方で初めて脳動静脈奇形が診断された例でも、年間2~3%の出血のリスクがあるので積極的な治療を検討した方がよいでしょう」
 発見の遅れ・放置には大きなリスクが伴うため、早期に発見し、より適切な治療を受けることが大切だと富永理事長は指摘する。
症状を的確に把握し
より効果的な治療を選択
 脳動静脈奇形の治療には、開頭手術、脳血管内治療、定位放射線治療の3つが挙げられる。開頭手術は、ナイダスを外科的に摘出するため、根治性が高く効果的と言われている治療法だ。そして脳血管内治療とは、カテーテルを用いてナイダスに流入する血管やナイダスに塞栓物質を流し込んで塞ぐ治療法だが、大きなナイダスの場合、脳血管内治療を数回行った後に、更に開頭手術や定位放射線治療が必要となるケースもある。この定位放射線治療とは、ガンマナイフを用いて192本の細かいガンマ線を患部に高精度に集中照射するという治療法で、脳の深部など摘出が難しい場合や、手術そのものが難しく合併症のリスクが高い場合などに適用されている。
 「当院は、最新の医療機器を導入した脳動静脈奇形(AVM)治療センターを設置しています。高度な技術力を要する脳動静脈奇形に対しても、常時受け入れ体制を整え、他科との綿密な連携を図るなど、専門スタッフによる高度なチーム医療を提供しています。〝後遺症を出さずにナイダスを除去、出血を完全に予防することを目標に掲げ、手術顕微鏡を用いた摘出術、血管内治療、ガンマナイフ治療の三層に、リハビリテーション、再生医療を加えた五層の構えで積極的に治療を行っております」と富永理事長は語る。脳動脈瘤の場合、発生場所がおおよそ決まっている。しかし、脳動静脈奇形の場合は、脳のどの場所にでも発生するため、様々な症状に対し臨機応変に対応しなければならない。
 そのため、豊富な経験と高い技術力が求められる難易度の高い疾患だ。
 「脳卒中治療ガイドラインによると単独手術での完全消失率は、摘出術82%、塞栓術6%、定位放射線治療83%とあります。しかし、当院ではほとんど全例に摘出術と塞栓術やガンマナイフ治療を組合せることで、完全消失率は100%に近い状態で、死亡率は0です。塞栓術単独は消失率が低く再発しやすいため行っていませんが、長径が約6~9㎝以上の大きい例では全例に、脳血管内治療と定位放射線治療を組合せて行っています」
 より的確な処置を行うには、経験に基づいた綿密な治療計画の立案が重要であると、富永理事長は強調する。
患者本位の手術体制
透明性の高いライブ手術
 トップランナーとして走り続けてきた富永理事長は、患者に安心して手術を受けていただけるよう、全国に先駆けて脳神経外科手術のライブ公開を導入している。院内モニターで手術の状況を見学することができる、透明性の高いこの取組みは、患者とその家族との信頼関係にも繋がっているという。
 更に、他院からの紹介患者が多い同院では、紹介元の医師による手術室見学も可能にしているだけでなく、全ての手術をビデオ収録するなど後進育成にも尽力している。
 現在、1万2000人以上と推定される国内の脳動静脈奇形患者。命の危険を伴うこともあるため早期治療が重要だ。
 「当院ではAVM相談専用ダイヤルを設け、外来受診が難しい患者さんにも簡易的な判断と今後のアドバイスを行っています。また、分院の富永クリニックで脳ドックを行い、速やかに連携できる体制を整えております。無症状のケースが多いため、重篤な状態になる前に早めに受診して欲しいですね」と富永理事長は優しい笑顔で語ってくれた。

 
 
 

※内容は2024年6月24日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 富永病院
代表TEL 06-6568-1601
住所 大阪府大阪市浪速区湊町1-4-48
公式Webサイト

 

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