むつが・まさと
医学博士。1996年、名古屋大学医学部卒業。同年、大垣市民病院。2006年、名古屋大学医学部附属病院心臓外科。09年、カナダアルバータ大学小児心臓外科クリニカルフェロー。10年、同大心臓移植・肺移植・補助人工心臓部門クリニカルフェロー。11年、名古屋大学医学部附属病院心臓外科特任助教。20年、名古屋大学心臓外科准教授・名古屋大学医学部重症心不全治療センターセンター長を経て、22年より現職。
3学会構成心臓血管外科専門医
あらゆる心臓疾患に対し24時間体制で対応、さらに重症心不全治療センターを立ち上げ、補助人工心臓・心臓移植を含めた高度心不全治療を提供している名古屋大学医学部附属病院。他科多職種の医療チームの先頭に立つ六鹿雅登教授に、現在の取り組みや重症心不全医療についてお話を伺った。
心臓疾患に対しフルオプションの
治療選択肢を患者に提供
チーム医療体制を強化し
24時間迅速対応を行っている
 東海地区の心臓医療をリードする施設として、心臓弁膜症、先天性心疾患、虚血性心疾患、重症心不全例、大動脈疾患など、あらゆる心臓疾患治療に対応している名古屋大学医学部附属病院。
 「当院では、大学病院としての特性を活かし、あらゆる心臓疾患に対してすべての治療の中からベストなものを患者さまご自身が選択できるように対応しています。24時間全ての時間に当番医を配置。昨年からは小児心臓外科医も着任し、より幅広い年齢層にも対応できるようになりました」と、六鹿教授は現在の治療体制を語る。
より低侵襲で負担の少ない
ロボット支援下手術を導入
心臓病治療は病院の総合力が重要
経験豊富な心臓外科医による多彩な治療の選択肢
 同院で現在特に力を入れているのは、患者負担が少ない低侵襲手術だ。2018年から僧帽弁形成術や置換術、三尖弁形成手術、大動脈弁置換術、Maze(不整脈手術)、左心耳切除術において3D内視鏡下手術(MICS)を行っていたが、2023年からは、ロボット支援下手術(ダビンチ手術)も導入している。
 従来の心臓手術で行われていた胸骨正中切開では、喉元からみぞおちにかけて20㎝以上切開、さらに胸骨を縦に2分し、これを開胸器で左右に広げて手術を行なっていた。そのため侵襲が大きく、術後の痛みと共に社会復帰までの時間の長さが患者の悩みの種となっていた。
 一方ロボット支援下手術の場合、切開を行うのは脇の下の3カ所と胸部1カ所の計4カ所のみ。しかもメインの切開幅は4㎝だが、その他の切開幅はわずか1㎝程度で極めて侵襲が少ない。
 「ロボット支援下手術では術後に上半身の運動制限がなく、切開部分からの感染症のリスクも少ない。しかもロボットアームの可動域は人間よりはるかに上で、狭い場所で細かく傷口を縫うといった動作に関しては、人間にはできないことも可能です。さらに10倍以上に拡大された患部を大画面に写してスタッフ全員で情報を共有できるので、医師の教育という点でもメリットがあります」と、六鹿教授はロボット支援下手術のメリットを強調する。
他科多職種の医療チームで
長い闘病期間を支える
ロボット支援下手術(ダビンチ)による
低侵襲心臓手術を実施する
 大学病院である同院の大きな役割として、重症心不全に対する治療がある。現在は重症心不全治療センターを設置し、補助人工心臓装着や心臓移植を含めた高度心不全治療を提供、六鹿教授はセンター長も兼任している。
 「当院では心臓移植に対応していますが、移植の適応が決まっても、実際に手術を受けられるまでには7〜8年以上かかるため、その間は植込型の補助人工心臓を装着します。これはポンプ本体を体内に植え込み、コントローラやバッテリーは体外でキャリーバッグに入れて携行するもの。従来の体外設置型の場合は入院が必要でしたが、植込型の場合は自宅で生活可能です。しかし患者さま本人だけでは管理しきれず、家族や支援者の助けが必要になります。そのため患者さまの身体やメンタルケアだけではなく、闘病を支えるご家族さまのケア、生活を支えるソーシャルワークまで、多職種による支えが求められます。そこで当院では他科多職種の医療チームを作り、長期に及ぶ治療生活を支えています」
 心臓移植が必要になるステージDと呼ばれる重症患者の場合、そのままでは1年生存率はわずか20%しかない。しかし補助人工心臓を付ければ5年間の生存率は8〜9割にもなり、さらに心臓移植が実現すれば車の運転、運動や山登りもできるようになる場合もあるという。
心臓疾患に自然治癒はない!
だから早期に受診を
 長年あらゆる心疾患と向き合ってきた立場から、気になる症状があれば早めに受診をしてほしいと六鹿教授は呼びかける。
 「階段の昇降後などに息切れがあったら、その原因が何かをはっきりさせるためにも一度は受診することをお勧めします。弁膜症などが原因の場合、早期に発見して治療をすれば完治も望めますが、発見が遅れれば心不全を発症してしまう可能性があります。狭心症も早く診断ができれば心筋梗塞になるのを未然に防ぐこともできます。心臓疾患は、放置して自然治癒することはありません。早めの受診で未病の段階で治療を開始することが大切です」と六鹿教授は早期検査の重要性について貴重なアドバイスを送ってくれた。

 
 
 

※内容は2024年7月30日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 名古屋大学医学部附属病院
TEL 052-741-2111
住所 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
公式Webサイト   公式Webサイト(名大病院心臓外科)

 

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