さとう・つよし
医学博士。1990年、筑波大学医学専門学群卒業。同年、筑波大学眼科入局。96年、筑波大学臨床医学系眼科助手。99年、ボストン大学医学部眼科博士後研究員。2001年、新八柱台病院を経て07年より現職。
千葉県松戸駅から、徒歩4分の好立地にあるサトウ眼科クリニック。アメリカ・ボストン大学医学部眼科博士後研究員として、糖尿病網膜症に関する研究に従事し、さらに白内障手術における「エイトチョップ法」の開発など、精力的に活動する佐藤剛院長へ、その取り組みについて詳しく話を伺った。
高齢者の通院状況も考慮し
治療環境を整備
佐藤院長により開発された水晶体核を8分割まで行う
低侵襲な白内障日帰り手術
 2007年に開院以来、白内障、緑内障、網膜疾患などに注力してきた医療法人社団松福会サトウ眼科クリニック。高齢化が進む現在、60歳代以上の患者増加も視野に入れ、千葉県内でも上野駅から25分・4路線が乗り入れる松戸駅から徒歩4分の好立地で治療を開始した佐藤剛院長。白内障治療の現状について、次のように語る。
 「我々が物を見るためには、まずは目に飛び込んできた光が眼球内にある角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を通って網膜に集約される必要があります。この中で水晶体はレンズの役割を担っている組織ですが、白内障とは、この水晶体が白濁して視力低下を招く疾患です。発症の大きな要因は加齢で、80代になればほぼ100%の人に発症しますが、現在、白内障を治療するには、手術以外の選択肢はありません」
患者の将来を見据え
低侵襲な白内障手術を研究
豊富な経験を活かして
より適切な検査と治療を実践
 現在白内障手術では、一般的に、混濁した水晶体を除去し、代わりに眼内レンズを入れる「超音波乳化吸引術」という術式が行われている。角膜(黒目)と強膜(白目)の境目を2〜3㎜ほど切開して、先端が超音波の速さで振動する特殊針(超音波チップ)を挿入し、水晶体核を砕いて(乳化)吸引して、残された水晶体嚢に眼内レンズを挿入するという方法だ。「術式の中でも、プレチョップ法は、超音波乳化吸引前にあらかじめ水晶体核を分割することで、手術時間を短縮し、眼内組織に対して低侵襲的な術式です。しかし、利点もある一方、技術的に非常に難易度が高い」と指摘する佐藤院長は、糖尿病網膜症や緑内障に関する研究などを行い、アメリカ・ボストン大学医学部眼科博士後研究員としても活躍し、長年培ってきた知識と技術をもとに、プレチョップ法を改良、発展させたエイトチョップ法の開発に心血を注いできた。
 「プレチョップ法は、水晶体核を4分割していたが、吸引が難しいので、水晶体核をさらに細かく8分割にしたら、より吸いやすくなるのではないだろうか?というのがエイトチョップ法着想の原点でした」と佐藤院長は語る。エイトチョップ法については2009年に眼科手術学会、そして2024年にアメリカの白内障学会でも発表。実際の手術では、この術式専用のエイトチョッパーを水晶体核の中央に刺入して水晶体核を2分割し、その後水晶体核を90度回転させて4分割、さらにそれを2分割して最終的に8分割にするという。
 「水晶体核を8分割することで、より少ない超音波エネルギーで破壊することが可能になり、吸引除去する時間が短縮されるため手術時間も短く、普通の症例であれば4〜5分で終わります。そのため角膜内皮細胞や他の眼内組織に対する侵襲を抑えることができ、従来の術式より術後の眼圧下降作用の温存が期待できます。本術式の場合、眼圧が約10%下がるケースも多く、白内障の手術を受けることで緑内障の治療にもなります」と、佐藤院長はそのメリットを強調する。さらに佐藤院長は、水晶体の核が硬くて分割できないケースや、角膜混濁や散瞳不良といった難症例に対して、エイトチョッパーの先端部を短く、鋭くしたランスチョッパーという手術器具を開発し、2019年に眼科手術学会において発表を行なったという。
術後に後悔しない
白内障手術を受けてほしい
アメリカ及びヨーロッパ白内障屈折手術学会が発行する『Journal of Cataract & Refractive Surgery』誌(2023年5月号)論文掲載、
最新の白内障術式として表紙を飾る
 「白内障手術は安全な手術であると誤解されていますが、患者さんによっては手術が難しい場合もあり、手術を諦めている患者さんもいます。私は難しい手術であっても、合併症の少ない白内障手術を受けていただけるよう努めています」と語る佐藤院長は、これまで培ってきた知識と技術を広く公開し、多くの眼科医が技術習得できる環境を整えており、定期的に患者を対象とした講習会を開催するなど、後進の育成・治療普及にも励んでいる。そして白内障で悩む人に対しては、最後に次のようなアドバイスを送ってくれた。
 「現在、白内障の手術は、数多くのクリニックで受けることができますが、執刀医によって手術の方法や経験も異なり、手術の難易度も患者さんによって違います。重篤な合併症を起こし、術後経過の良くない患者さんが再手術のために転院されて来ることもあります。決して白内障手術は簡単な手術ではありません。手術を受けたことを後悔する結果にならないように、なるべく情報を集め、様々な治療方法の中から、よりご自身に合った手術を受けてほしいですね」

 
 
 
 
 

エイトチョップ法に関する論文
1. Sato Tsuyoshi. Corneal Endothelial Changes after Phacoemulsification using the Eight-chop Technique in Diabetic Eyes.
 J Pers Med. 2025, 15(5), 209.
2. Sato Tsuyoshi. Corneal Endothelial Cell Loss in Shallow Anterior Chamber Eyes after Phacoemulsification Using the Eight-Chop Technique.
 J Clin Med. 2025, 14(9), 3045.
3. Sato Tsuyoshi. Minimizing Endothelial Cell Loss in Hard Nucleus Cataract Surgery: Efficacy of the Eight-Chop Technique.
 J Clin Med. 2025, 14(8), 2576.
4. Sato Tsuyoshi. Eight-Chop Technique in Phacoemulsification Using Iris Hooks for Patients with Cataracts and Small Pupils.
 J Clin Med. 2024, 13(23), 7298.
5. Sato Tsuyoshi. Reply: Efficacy and safety of the eight-chop technique in phacoemulsification for patients with cataract.
 J Cataract Refract Surg. 2023, 49(10), 1078-1079.
6. Sato Tsuyoshi. Efficacy and safety of the eight-chop technique in phacoemulsification for patients with cataract.
 J Cataract Refract Surg. 2023, 49(5), 479-484.

 
 

※内容は2025年7月28日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 サトウ眼科クリニック
TEL 047-702-9822(代表)
住所 千葉県松戸市根本3-3
公式Webサイト

 

受付時間
8:30〜11:30(初診は11:00まで)


【休診日】木、土午後、日、祝