「良医の視点」を皆さまの熱いご要望によりweb公開決定!(2017.4月〜現在まで・公開中)週刊新潮にて掲載
たかはら・たろう
医学博士。1989 年、秋田大医学部卒業。 慶大小児科の後、放射線科に転向。獨協医大、米国留学、聖マ医大、東海大、オランダユトレヒト大客員准教授を経て、2010 年より現職
医学博士。1989 年、秋田大医学部卒業。 慶大小児科の後、放射線科に転向。獨協医大、米国留学、聖マ医大、東海大、オランダユトレヒト大客員准教授を経て、2010 年より現職
検査着のままで受けられる新しい乳がん検診
「ドゥイブス・サーチ」
「ドゥイブス・サーチ」
乳がん検診といえば、乳房をX線(レントゲン)で撮影するマンモグラフィや、超音波を当てて乳房内部の状態を知る超音波検査(エコー)が一般的だ。どちらも乳がんの発見に有用な検査だが、敬遠する女性は少なくない。なぜならマンモグラフィは病変をより鮮明に写し出すために乳房を透明な板で平たく圧迫する必要があり、人によっては強い痛みを伴うことがある。またマンモグラフィもエコーも検査の際には胸をはだけるため、それにためらいを覚え、受診を避ける人もいる。
しかしあらためて言うまでもないことだが、がんの発見には検診を受けることが重要だ。とくに乳がんの場合、罹患率はまだ若い30代から増加する。そのため検診が果たす役割は大きい。にもかかわらず、日本の乳がん受診率は約45%にとどまっている。欧米諸国では80%近い受診率であることと比較すると、あまりにも低い数字といえる。東海大学医用生体工学科教授である高原太郎医師はそうした状況を憂いて新しい乳がん検診の方法を開発した。それが、DWIBS(ドゥイブス)法を用いた乳がん検診「ドゥイブス・サーチ」だ。
DWIBS法はMRIで撮影できる「拡散強調画像(DWI)」を改良したもので、もともと全身のがんを見つける方法として使われていた。高原教授は痛くない乳がん検診の普及を目指して、全身の拡散強調画像DWIBS(ドゥイブス)法によるがんスクリーニングを開発、それを乳がんの検診に応用し、乳房の検査に特化させたのだ。
ドゥイブス・サーチによる乳がん検査は検査着を着たままで受けられる。胸をはだける必要も、強く挟む必要もない。うつ伏せになってMRIの機械に入り、15分程度じっとしているだけで検査が完了する。まさに画期的な方法だ。
しかしあらためて言うまでもないことだが、がんの発見には検診を受けることが重要だ。とくに乳がんの場合、罹患率はまだ若い30代から増加する。そのため検診が果たす役割は大きい。にもかかわらず、日本の乳がん受診率は約45%にとどまっている。欧米諸国では80%近い受診率であることと比較すると、あまりにも低い数字といえる。東海大学医用生体工学科教授である高原太郎医師はそうした状況を憂いて新しい乳がん検診の方法を開発した。それが、DWIBS(ドゥイブス)法を用いた乳がん検診「ドゥイブス・サーチ」だ。
DWIBS法はMRIで撮影できる「拡散強調画像(DWI)」を改良したもので、もともと全身のがんを見つける方法として使われていた。高原教授は痛くない乳がん検診の普及を目指して、全身の拡散強調画像DWIBS(ドゥイブス)法によるがんスクリーニングを開発、それを乳がんの検診に応用し、乳房の検査に特化させたのだ。
ドゥイブス・サーチによる乳がん検査は検査着を着たままで受けられる。胸をはだける必要も、強く挟む必要もない。うつ伏せになってMRIの機械に入り、15分程度じっとしているだけで検査が完了する。まさに画期的な方法だ。
日本人に多い高濃度乳房も鮮明に撮影精度の高い検査が可能に
ドゥイブス・サーチには「乳房をつぶさないので痛くない」「検査着のまま受けられるので乳房を見られない」ことのほかにも、さまざまなメリットがある。
大きな磁石による強い磁場と電波を使って画像を得るMRIは、X線を使うマンモグラフィと違って放射線による被ばくがない。拡散強調画像を使用するため、MRI検査で使用されることの多い造影剤を使わずに済むので、アナフィラキシーショックのリスクも回避できる。また乳房の奥(胸壁)や脇の下まで、死角のない撮影が可能だ。さらに日本人の半数近くを占めるといわれる乳腺の密度の濃い「高濃度乳房」の場合、マンモグラフィではがんを見つけにくい傾向があるのだが、ドゥイブス・サーチではその影響を受けにくいことも分かっている。
なお2019年2月時点のドゥイブス・サーチの受診例は1000例を超えており、このうち結果のまとまった706例におけるがん発見率は1・4%、陽性的中率は17%だった。この結果は一般的なマンモグラフィのがん発見率=0・3%よりも高い値を示している。
大きな磁石による強い磁場と電波を使って画像を得るMRIは、X線を使うマンモグラフィと違って放射線による被ばくがない。拡散強調画像を使用するため、MRI検査で使用されることの多い造影剤を使わずに済むので、アナフィラキシーショックのリスクも回避できる。また乳房の奥(胸壁)や脇の下まで、死角のない撮影が可能だ。さらに日本人の半数近くを占めるといわれる乳腺の密度の濃い「高濃度乳房」の場合、マンモグラフィではがんを見つけにくい傾向があるのだが、ドゥイブス・サーチではその影響を受けにくいことも分かっている。
なお2019年2月時点のドゥイブス・サーチの受診例は1000例を超えており、このうち結果のまとまった706例におけるがん発見率は1・4%、陽性的中率は17%だった。この結果は一般的なマンモグラフィのがん発見率=0・3%よりも高い値を示している。
検査にはMRI装置の画質調整が必須普及に課題も
無痛MRI乳がん検査 (ドゥイブス・サーチ)の特長 |
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乳房をつぶさないので痛くない
検査着のまま受けられるので恥ずかしくない 放射線被ばくがない 造影剤を使わない 撮影の死角がない 高濃度乳房にも影響を受けにくい |
現在ドゥイブス・サーチを受けられる病院は日本全国で11施設。今後も増えていくことが期待されるが、若干の課題もある。「DWIBS法でここまで鮮明な画像を撮影するには、まずMRI装置との相性が重要になります。その上でさらに相当な画質の改善が必要です。提携病院とのサービス開始前には、メーカーおよび技師さんと、何度も画質の調整を行います。通常のMRI画像ではあまり差がなくても、拡散強調画像では画質の差がはっきり出るのです。読影時にもチェックを行い、だんだんとずれてくる画質を常に良好に保ってもらっています」と高原教授。
鮮明な画像を得られなければドゥイブス・サーチの真価は発揮できない。だがその調整ができるのは現状、高原医師のみ。それが普及のハードルになっている面は否めない。高原医師はそうした課題をカバーするため、学会の進める画質の基準づくりに協力する。また並行して、導入を容易にする努力を行っている。導入施設で撮影された画像の読影やメンテナンスもすべて引き受けているという。「がん検査の受診頻度は多くても1年に一度。そのため1回の検査で、できるだけ正確にがんの有無を診断する必要があります。ドゥイブス・サーチには『さわられない』『つぶされない』『痛くない』ほかに正確性も期待できます」と高原医師はドゥイブス・サーチについて力強く語ってくれた。
ドゥイブス・サーチは今後の乳がん検診を大きく変えることになるかもしれない。
鮮明な画像を得られなければドゥイブス・サーチの真価は発揮できない。だがその調整ができるのは現状、高原医師のみ。それが普及のハードルになっている面は否めない。高原医師はそうした課題をカバーするため、学会の進める画質の基準づくりに協力する。また並行して、導入を容易にする努力を行っている。導入施設で撮影された画像の読影やメンテナンスもすべて引き受けているという。「がん検査の受診頻度は多くても1年に一度。そのため1回の検査で、できるだけ正確にがんの有無を診断する必要があります。ドゥイブス・サーチには『さわられない』『つぶされない』『痛くない』ほかに正確性も期待できます」と高原医師はドゥイブス・サーチについて力強く語ってくれた。
ドゥイブス・サーチは今後の乳がん検診を大きく変えることになるかもしれない。
※内容は2019年4月4日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください
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ドゥイブス・サーチ MRI乳がん検診 受診可能施設 ※各医療機関名からリンクあり | |||
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