「良医の視点」を皆さまの熱いご要望によりweb公開決定!(2017.4月〜現在まで・公開中)週刊新潮にて掲載

たかい・しんろう
1980年京都府立医科大学卒業。89年カリフォルニア大学留学。2001年ピッツバーグ大学医学部招聘教授。03年帝京大学医学部整形外科教授。11年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医

 

高齢化社会が急激に進行する中、膝、股、肩関節などの変形性関節疾患に悩む人も増えている。今回は、患者の最後の砦として、高度で先端的な治療を行っている日本医科大学付属病院の4人の整形外科専門医にお集まりいただき、同院の膝関節疾患に対する取り組みや整形外科治療のあり方ついて語って頂いた。
変形膝関節症の治療には
多様な選択肢がある
最新の設備と医療機器を揃えた手術室

整形外科膝スペシャリストによる人工膝関節置換
高井 高齢化が進むと関節の変性疾患に悩む人が増えますが、近年は特に変形性膝関節症の患者さんが増加傾向にあります。現在すでに1600〜2000万人の患者さんがいるとも言われていますが、いわゆる団塊の世代が70代になるこれからは、さらに増えることが予想されています。
眞島 変形性膝関節症の治療では、運動と薬物を中心とした保存療法と手術療法がありますが、保存療法で使用する薬物一つとっても、ヒアルロン酸から消炎鎮痛剤、そして湿布まで多様にあります。
飯澤 手術も同様で、人工膝関節置換術だけが選択肢ではありません。日本人はO脚が多いので、内側の膝関節に過度にストレスがかかります。そこで骨を切り、少し角度を変えてX脚気味にすることで荷重をきれいな軟骨が残っている外側の脛骨関節に移動させる「高位脛骨骨切り術」なども有効な方法で、当院でも年間80症例※1実施しています。そのほか、関節内ですり切れた半月板や軟骨や増殖した滑膜を処置する関節鏡視下手術なども手がけています。人工関節置換術が占める割合は、手術全体の2割程度でしょうか。
大島 メジャーリーガーの田中選手や大谷選手が行なったことから、整形外科領域でもPRP療法に注目が集まっております。これは、患者さんの血液から採取した多血小板血漿(PRP)を注入する方法ですが、当院では、PRPと炎症をおさえるサイトカインを高濃度に抽出し膝関節に投与する次世代型PRP療法を開始する予定です。※2
基礎疾患があっても他科と連携して
最先端治療を行えるのが大学病院の強み
医学博士
日本医科大学付属病院 整形外科学臨床教授
眞島 任史
まじま・ときふみ
1984年北海道大学医学部医学科卒業。1997年カナダ カルガリー大学留学。2003年北海道大学大学院医学研究科助教授。07年北海道大学大学院医学研究科人工関節・再生医学講座教授。13年国際医療福祉大学病院教授・整形外科部長。17年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医

医学博士
日本医科大学付属病院 整形外科学講師
飯澤 典茂
いいざわ・のりしげ
1991年日本医科大学卒業。97年同大学院卒業。2002年日本医科大学付属病院助手。12年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医
高井 変形性膝関節症に代表される整形外科的な疾患は、QOL(生活の質)に直結します。それだけに患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療が最も大切だと考えています。
飯澤 それを可能にするためには、多様な治療を提供できるスタッフのレベルの高さや医療環境が重要になりますよね。
大島 環境という点では、やはり医療においても近年はコンピュータテクノロジーの応用が欠かせなくなっています。当院では2台のコンピュータナビゲーションシステムを導入し、手術に活用しています。
高井 人工膝関節の手術ではメスを入れる微妙な角度によって術後の予後が変わってきます。ナビゲーションシステムを活用すると、手術の正確性だけではなく、質の均一化も実現できます。さらなる成績向上を目指してロボット支援手術を検討しています。
飯澤 大学病院の場合、基礎疾患を抱える患者さんでも安心して手術を受けられるというメリットもありますよね。
眞島 他院では敬遠されがちな、糖尿病や心臓疾患を抱えた患者さんでも、専門医と連携して治療と並行しながら手術が可能ですからね。
飯澤 当院で言えば、院内にリバビリ環境が整っているので、退院の際にはリハビリが完了しているという点も、患者さんには大きなメリットだと捉えています。
大島 当院での人工関節置換術の入院期間の目安は20日です。少し長いと感じるかもしれませんが、それは十分なリハビリを行い、階段の昇降や杖歩行ができることを確認してから退院するためです。
目指すのは一人ひとりのライフスタイルに合わせた
オーダーメイド治療
医学博士
日本医科大学付属病院 整形外科学講師・医局長
大島 康史
おおしま・やすし
1998年近畿大学医学部卒業、京都府立医科大学整形外科入局。2000年京都府立医科大学大学院。03年カリフォルニア大学サンディエゴ校。13年ニューヨーク大学。15年日本医科大学整形外科、10月より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医
高井 オーダーメイドの治療を実現するためには、もう一つ、患者さんとのコミュニケーションを欠かすわけにはいきません。
飯澤 私は、初診の際に、患者さんの生活スタイルや仕事の内容、趣味などを徹底的に聞き出すようにしています。
眞島 同じ症状、同じ年齢であっても、その人のライフスタイルによって求める目標は大きく異なります。痛みさえ取れればいいという患者さんもいれば、90歳を超えても旅行も楽しみたいから人工関節置換術もいとわないという患者さんもいらっしゃいます。
高井 私は、医師の満足が患者さんの不満足にならないように常に注意しています。
大島 最近は患者さんも事前によく病院について調べてから来院される傾向がありますね。
高井 ライフスタイルや年齢によって、保存療法が最善の治療法である場合もあるし、人工関節は優れた技術ですが、それだけが唯一の手術法ではない。自分にあった、最善の治療を提供してくれる多様なスキルと環境が整った病院を見極めるという視点を、ぜひ大切にしていただきたいと思います。


 高井主任教授をはじめ、日本医科大学付属病院4人の整形外科膝スペシャリストが、増加傾向にある関節疾患、病院選びの重要性について語ってくれた。

※1:2018年1月〜12月  ※2:PRP療法 約40万〜50万円

 

※内容は2019年6月20日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 日本医科大学付属病院
フリガナ ニホンイカダイガクフゾクビョウイン
TEL 03-3822-2131
住所 東京都文京区千駄木1-1-5
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