いぬい・としひこ
1986 年 徳島大学医学部卒業
   同 年 富永病院
2002 年 脳神経外科医長
2003 年 脊椎・脊髄センター センター長
2011 年 脳神経外科部長
2026 年 脳神経外科主任部長
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医
日本脊髄外科学会 理事
1970年、脳神経外科の専門病院として開院した富永病院。半世紀以上にわたって高難度症例に対応してきた経験を活かし、『神経を守ること』を重視した脳神経外科医による脊椎脊髄治療について、乾敏彦脊椎・脊髄センター長に話を伺った。
いかに神経を守るか
脳神経外科の脊椎脊髄治療

脳神経外科の精密技術を応用し
神経圧迫を除去する低侵襲手術
 長年にわたり、脳神経外科の専門病院として地域医療を支えてきた富永病院。脳神経外科医が20名在籍し、脳血管障害、脳腫瘍、機能系疾患、脊椎・脊髄疾患、頭部外傷など、あらゆる脳脊髄疾患に対し高度な医療を提供している。さらに、脳神経内科、整形外科、循環器内科、神経形成外科などを開設し、患者のニーズに対応できる体制を整えてきた。そんな富永病院が注力している専門的治療の一つが、脊椎・脊髄治療だ。
 「Neurosurgery」は「脳神経外科」と訳されるが、その専門は、脳だけでなく脊髄や末梢神経を含む神経系全体である。「日本において、脊椎脊髄領域は主に整形外科が担ってきた分野であり、脳神経外科で専門的に取り組む医師は限られています。しかし、当院にはこの領域を専門とする脳神経外科医が5名在籍しています」と乾敏彦脊椎・脊髄センター長は語る。
 腰や下肢に痛みやしびれなどの症状がある場合、整形外科を受診する患者が多く見受けられる。しかし、乾医師は、「脊髄腫瘍や脊髄血管奇形はもちろんのこと、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症など、脳神経外科医が行う脊椎脊髄治療の強みは、脳から脊髄、末梢神経までを連続した神経系としてとらえ、個々の部位だけでなく総合的視点で診断できる点にある」と話す。「いかに神経を守るか」という信念のもと、脳血管や脳神経に対する顕微鏡手術で培われた繊細な手術操作の経験が、脊髄周辺の手術にも応用されているという。
固定ありきではない
高度な手技で圧迫を取り除く
高精細3D外視鏡を用いてモニター画像を確認しながら行う
 加齢による変性等によって、骨の変形や靱帯の肥厚、椎間板の突出などが生じると、神経が圧迫され、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどを引き起こす。手術では、神経への圧迫を取り除く「除圧」が重要となる。ただし、骨や靱帯を大きく切除しすぎると、今度は脊椎の安定性が損なわれ、すべり症や腰痛悪化につながる可能性がある。
 乾医師は、「当院では20年以上前から、除圧と脊椎の安定性を両立させるため、傷口が小さい切除で神経を守る低侵襲手術を追求してきました」と語る。ミリ単位で切除範囲を調整しながら、神経への負担を抑えた手術を行っているという。
 従来、すべり症などの不安定性を伴う症例では、ボルトを用いた固定術が標準的と考えられてきた。しかし近年では、「不安定性=固定」という一律の考え方は見直されつつあるという。「術後に多少すべりが進行しても、症状悪化につながらないケースも多くあります。固定する範囲が広がるほど周囲への負担も増えていく。だからこそ、本当に固定が必要かを慎重に判断することが大切です」と乾医師。まずは神経を守りながら、できる限り本来の脊椎機能を残す治療を重視している。
3次元の外視鏡を駆使
ミリ単位で神経を守る
外視鏡など最新医療機器を用いて行う脊椎脊髄手術
 脊髄や神経は極めて繊細な組織だ。手術では、外視鏡に映る組織のわずかな動きや手応えを頼りに、術者がミリ単位、ときにはミリ以下の世界で骨や靭帯、椎間板や腫瘍を慎重に取り除いていく。
 手術に用いる外視鏡は、傷口を大きく広げることなく操作でき、小型カメラでとらえた高精細な映像が3Dモニターに映し出される。そのため、奥行きや細部を把握しやすく、術野の作業空間を広く確保でき、看護師ら医療スタッフと術野を共有することも可能だという。一方で、外視鏡で確認しにくい部位は、必要に応じて内視鏡を併用。また、全例で術中神経モニタリングを行い手術の安全性向上に取り組んでいる。手術顕微鏡も含め、それぞれの機器の特性を生かした、体の負担が少ない、いわゆる「低侵襲手術」を行っている。
高齢化社会で高まる
低侵襲治療へのニーズ
患者に寄り添う脊椎脊髄センターの医療チーム
【後列】殿元医師、乾センター長、
長尾副センター長、青木医師
【前列】濵田主任、佐伯医師
 近年、脊柱管狭窄症など加齢性脊椎疾患の患者は増加し、歩行困難やしびれに悩む高齢患者も少なくない。乾医師は、「固定を伴わない除圧術によって、再び歩けるようになった高齢の患者さんも多くいます」と話す。もちろん固定術が適した症例もあるが、「固定しかない」とあきらめていた患者でも、別の選択肢が見つかる可能性はあるという。
 「症状が進行すると、どうしても治療の選択肢は限られてしまいます。だからこそ、我慢しすぎず早めに相談してほしい。これまで培ってきた技術を、患者さんに還元していきたいですね」
 富永病院の理念『一人でも多く救命し、一人でも多く後遺症なく社会復帰していただく』を軸に、「脳神経外科医として神経を守りながら、脊椎本来の機能をできる限り残す」という信念をもって、乾医師はこれからも低侵襲で安全性の高い治療に挑み続ける。

 
 
 

※内容は2026年7月29日掲載時点のものです。詳しくは各医療機関にお問い合わせください

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医療機関情報
施設名 富永病院
代表TEL 06-6568-1601
住所 大阪府大阪市浪速区湊町1-4-48
アクセス JR大和路線難波駅より徒歩1分
公式Webサイト

 

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医療機関情報
施設名 富永クリニック
TEL 06-6643-2660
住所 大阪府大阪市浪速区敷津西2-2-14
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